税理士事務所と税理士法人の違いは?会計事務所の法人格もわかりやすく解説
税理士事務所と税理士法人、どちらが自分に適しているか悩んでいませんか。
両者の違いは法人格の有無です。
税理士事務所は個人事業として税理士個人が権利義務を負う形態で、税理士法人は法人格を持つため経営者が変わっても事業を継続できます。
本記事では、制度上の違い、法人化のメリット・デメリット、設立の流れまでを解説します。
記事の結論
税理士事務所と税理士法人の違いとは?
税理士の業務形態は、「個人で営む税理士事務所」「法人格を有する税理士法人」「税理士事務所や税理士法人に雇用されて働く所属税理士」の3つです。
税理士事務所と税理士法人では、法的な位置付け、経営者の責任範囲、組織運営の仕組みが異なります。
ここでは、税理士の各業務形態の特徴と公認会計士が設立する法人形態についても説明します。
- 税理士の立場の違いによる種類
- 税理士事務所は個人事業として運営される
- 税理士法人は法人格を持つ特別法人
- 公認会計士が設立する場合は「公認会計士事務所」または「監査法人」
税理士の立場の違いによる種類
税理士は、業務を行う立場の違いにより、次の3つに分類されます。
| 開業税理士 | 個人事業として税理士事務所を開業した経営者 | 
|---|---|
| 社員税理士 | 税理士法人に出資して経営陣となった税理士 | 
| 所属税理士 (勤務税理士) | 税理士法人や税理士事務所で、従業員として勤務する税理士(以前の呼称は補助税理士) | 
士業法人や医療法人、合名会社・合資会社では、出資して経営に関与する者を「社員」と呼ぶことが法令で定められています。
一般企業における「社員」(従業員)とは意味が異なるため、注意が必要です。

税理士法人における「社員」は、株式会社の取締役に相当すると考えられます。ただし、株式会社の取締役は必ずしも出資者ではないため、その点において社員税理士とは異なります。
税理士事務所は個人事業として運営される
税理士事務所は、税理士が個人事業主として開業する形態であり、法人格を有していません。
そのため、契約や責任の主体は、すべて個人事業主である税理士本人です。
事務所名義ではなく、税理士個人の名義で業務を行い、すべての権利義務を負うことになります。
以下に、税理士事務所の主な特徴を整理します。
| 特徴 | 内容 | 
|---|---|
| 運営者 | 税理士本人(個人事業主) | 
| 規模 | 小規模(経営者+職員数名) | 
| 法的性質 | 法人格なし(すべて個人名義) | 
例えば、税理士が地元で自宅や小規模事務所を拠点に、商店や個人事業主と顧問契約を結び、長期的な信頼関係を築く運営形態が一般的です。
地域に密着した柔軟な対応が可能である反面、業務を経営者1人で担うことが多く、運営の継続性には注意が必要です。
実際、経営者の引退や死亡により、事務所が廃業となる場合もあります。
事業を承継する際には、顧問契約を個別に引継ぐための手続きが必要です。
また、「税理士事務所」と「会計事務所」は呼称上の違いにすぎず、法律上の区別はありません。
いずれの名称でも、税理士としての業務を行えます。

税理士事務所は、経営者個人がすべてを担うシンプルな運営形態である一方、その特性から事業継続には一定のリスクが伴うことを理解しておく必要があります。
税理士法人は法人格を持つ特別法人
税理士法人は、2001年に税理士法により創設された特別法人です。
設立には、税理士2名以上による持分出資と法務局での登記が必要であり、登記により法人格を取得します。
法人としての権利義務を有するため、経営者や社員税理士が交代しても契約関係や業務は法人に帰属し続けます。
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 設立要件 | 税理士2名以上の出資+登記 | 
| 法人名義 | 「税理士法人」の表記が必須 | 
| 継続性 | 社員税理士交代でも組織継続 | 
| 責任形態 | 社員税理士は無限連帯責任 | 
複数の税理士が所属し、拠点を分けて事務所を展開する税理士法人もあります。
顧問契約は法人単位で締結されるため、所属税理士が異動や退職をしても、顧客との関係は継続します。
また、名称には「税理士法人」の表記が必須のため、法人格を有する組織であることが明確です。

税理士法人は、事業の継続性、組織的な対応力、社会的信用の確保に優れた形態であり、個人事務所と比べて安定性や組織力に大きな違いがあります。
公認会計士が設立する場合は「公認会計士事務所」または「監査法人」
公認会計士が法人を設立する場合、「公認会計士事務所」または「監査法人」の形態があります。
監査法人は公認会計士法に基づく法人であり、税理士法人とは制度が異なります。
公認会計士の活動形態の違いは次のとおりです。
| 区分 | 主な業務 | 設立要件 | 特徴 | 
|---|---|---|---|
| 公認会計士事務所 | 会計・監査・税務 | 個人開業 | 個人事業として運営 | 
| 監査法人 | 法定監査(上場企業や上場準備中企業など) | 公認会計士5名以上+登記 | 大規模な監査専門法人 | 
| 会計法人※ | コンサル・顧問業務など | 条件あり(柔軟) | 税理士法人に近い業務形態 | 
※「会計法人」は正式な法的分類ではなく実務上の呼称です。
監査法人は、法定監査を主たる業務とし、公認会計士5名以上による設立が必要です。
また、公認会計士は追加要件を満たすことで税理士登録もできます(2017年3月以前は無条件で登録可能でした)。
税理士登録も行った公認会計士の場合、会計法人としてコンサルティングや顧問業務を行いつつ、税理士法人に類似した業務形態を行うケースもあります。

税理士登録も行った公認会計士は、「公認会計士税理士事務所」として税務と会計の両業務を行うことが可能です。
税理士事務所と税理士法人の違いを比較
税理士事務所と税理士法人は、運営形態や法的な位置付けが大きく異なります。
以下に、主な違いを一覧で整理しました。
| 比較項目 | 税理士事務所(個人事業) | 税理士法人 | 
|---|---|---|
| 法人格の有無 | なし(個人事業) | あり(法務局登記が必要) | 
| 設立要件 | 税理士1名で開業可能 | 税理士2名以上で共同設立 | 
| 事業継続性 | 経営者の死亡・引退で廃業の可能性 | 社員税理士交代でも法人は継続 | 
| 規模・体制 | 小規模(経営者+職員数名) | 小〜大規模まで多様、部門制も可能 | 
| 支店設置 | 原則1拠点のみ | 支店の設置が可能 | 
| 責任の範囲 | 経営者が全責任を負う | 社員税理士が無限連帯責任 | 
| 社会的信用 | 経営者個人の信用に依存 | 組織としての信用力が高い | 
| 福利厚生・採用面 | 社保加入は任意(5人未満) | 社保加入が義務、採用強化しやすい | 
| 顧客層 | 個人・中小企業が中心 | 中堅〜大企業、専門性の高い案件にも対応 | 
| 名称表記 | 「税理士事務所」 | 「税理士法人」の表記が義務付けられる | 
税理士法人は、法人格を有することで、組織的な対応や業務分担が可能となり、対外的な信用力や採用体制の面においても優位性があります。

税理士法人設立には複数の税理士による持分出資が必須であり、出資をした社員税理士が無限連帯責任を負うといった、責任や制度上の相違点にも注意が必要です。
法人化を検討するタイミングと判断基準
税理士事務所の法人化は、経営環境や業務体制の変化に応じて検討する必要があります。
法人化を検討すべきタイミングと、判断基準について説明します。
- 法人化を検討すべき主なタイミング
- 法人化を判断する3つの視点
法人化を検討すべき主なタイミング
個人事業としての限界を感じ始めた段階が、法人化を検討するタイミングです。
税理士事務所において経営者1人による対応に限界が生じる場合や、組織的な信頼性が求められる場面においては、法人化が現実的な選択肢となります。
| 状況 | 背景・目的 | 
|---|---|
| 業務が拡大した場合 | 人員や顧問先が増加し、業務分担の必要性が高まる | 
| 事業の継続性を重視する場合 | 経営者への依存を軽減し、安定した組織運営への移行を図る | 
| 税理士同士で共同経営する場合 | 複数名による運営には法人化が不可欠である | 
| 信頼性を高める必要がある場合 | 法人格の取得により、企業からの信用を得やすくなる | 
顧問先や従業員数が増加すると、個人による運営では管理や対応に限界が生じます。
また、経営者の病気や引退に備え、事業継続に備えた体制を構築するうえでも、法人化は有効です。
他の税理士との共同経営や合併を検討する場合には、法人化が前提条件となります。

法人格を有することで、契約や信用力の面においても、有利に働きます。
法人化を判断する3つの視点
現在の事業状況や将来的な展望と照らし合わせながら、「経営面」「税務面」「信頼面」の3つの視点から検討することが大切です。
それぞれの視点について説明します。
- 経営面の視点
- 将来的に人材を雇用し、組織的に業務を進める体制を構築する場合は、法人化が有利。
- 法人化のためには、社会保険の加入や就業規則の制定などを行わなければならず、その結果、人材が定着しやすい雇用環境整備が可能。
 
- 税務面の視点
- 法人化によって、社員税理士本人の報酬と法人に留保する利益の分散が可能となり、節税上の利点が得られる場合がある。
- 法人化により、社会保険料の負担が増加する点には注意が必要。
 
- 信頼面の視点
- 個人事業では困難な場合でも、法人であることで対外的な信用力が向上する。
- 金融機関との取引や大手企業との顧問契約が円滑に進む可能性が高まる。
 

これら3つの視点のうち、いずれか1つでも該当する項目がある場合には、法人化を検討する価値があります。
事業を次の段階へ進めるための有効な選択肢の1つとして、法人化は重要な手段です。
法人化で得られる4つのメリット
法人化により、個人事務所では得にくい組織的な強みを活かした運営が可能になります。
ここでは、、税理士事務所の法人化で得られるメリットについて説明しましょう。
事業の継続性が向上する
税理士法人は法人格を有しているため、経営陣である社員税理士が交代しても組織は存続します。
これは、個人事業として運営される税理士事務所との大きな違いです。
| 観点 | 税理士事務所 (個人事業) | 税理士法人 (法人格あり) | 
|---|---|---|
| 経営者の交代時 | 廃業となる場合が多く、契約は終了 | 組織が継続し、契約も保持 | 
| 顧問先への影響 | 突然の契約終了リスクがあり不安定 | 継続的なサポートが可能で安心感がある | 
| 事業承継 | 顧問先ごとに契約移行が必要 | 社員税理士(経営者)交代のみで承継がスムーズに進む | 
経営者が急病となった場合や引退した場合でも、法人であれば顧問契約は法人名義で継続されるため、顧問先にとっての不安は最小限に抑えられます。
事業承継の場面でも、個人事務所では顧問先ごとに契約移行手続きを行う必要がありますが、法人であれば社員税理士が変更となるだけで組織全体としての事業を円滑に引継げます。

このように、顧問先との長期的な信頼関係を維持しつつ、事業継続や承継を円滑に行える点が、法人化による大きなメリットです。
人材採用・育成・組織運営がしやすくなる
個人事業のままでは、所内制度整備が不十分となり、優秀な人材の確保・定着・育成に課題を抱えやすくなります。
こうした課題を根本から改善し、組織としての運営力を高める手段として、法人化は有効です。
| 項目 | 概要 | 
|---|---|
| 社会保険 | 加入が義務化され、安心して働ける職場環境の整備が可能になる | 
| 採用力 | 法人格の信頼性により、応募者からの評価が高まり、人材確保に有利 | 
| 制度整備 | 就業規則や評価制度の整備により、透明性のある運営が実現できる | 
| 育成体制 | キャリアパスや研修制度の構築により、長期的な人材育成がしやすくなる | 
個人事務所では、職員数が5人未満であれば、社会保険の加入は任意ですが、福利厚生が不十分だと求職者から敬遠される要因となります。
一方、法人であれば社会保険の加入が義務付けられるため、労働条件の信頼性が高まり、人材確保に有利です。
また、給与体系や評価制度を整備しやすくなり、職員の定着率やモチベーションの向上にもつながります。

税理士事務所の成長を見据える場合は、労務面の整備がしやすい法人化のメリットは大きいといえます。
専門分野への特化と分業体制を確立できる
専門性の高い案件が増加すると、税理士1人で全業務に対応するには限界があります。
国際税務や資産税、M&Aなどの専門業務に対応するためには、組織的な体制の構築が不可欠です。
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 専門性強化 | 国際税務・M&A・資産税など、高度な分野ごとに担当者を配置できる | 
| 業務効率化 | 担当領域の明確化により処理スピードが向上し、経営者の業務負担も軽減される | 
| 組織的対応力 | チームでの連携体制が整い、複雑・大規模案件にも柔軟に対応可能となる | 
個人事務所では、経営者が申告業務から相談対応まですべてを1人で担うケースが多く、専門分野への対応時間を確保しにくくなります。
しかし、法人化後は担当分野ごとに専門人材を配置することで、顧問先の多様なニーズに対し、高品質かつ効率的な対応が可能です。
分業によるスピードと正確性の向上に加え、職員同士のチームワークによる継続的なサポート体制も整備しやすくなり、結果的に事務所全体の信頼性と競争力が高まります。

業務を「個人の力量」に頼る運営から、「組織の仕組み」で支える運営へと転換できる点が、法人化の大きなメリットです。
経営・税務上の柔軟性が増す
個人事業では、所得や契約がすべて経営者個人に帰属するため、税務や経営判断の自由度に限界があります。
法人化により、報酬設計、資産管理、融資対応における柔軟性が大きく向上します。
| 項目 | 概要 | 
|---|---|
| 所得分散 | 個人報酬と法人利益に分けて課税調整がしやすくなる | 
| 契約・資産 | 法人名義での契約や資産保有が可能になる | 
| 資金調達 | 融資やリース契約など、法人としての信用が活かせる | 
法人化により社員税理士報酬を設定し、法人所得と分離することで、税率のコントロールが可能です。
また、法人名義による不動産の取得や金融機関との契約締結も容易になり、資産管理の面でもメリットがあります。
法人格を有することで対外的な信用力が高まり、事業拡大に向けた資金調達の手段も多様化します。

法人化は、節税のみならず、経営上の自由度や発展性を高める手段としても有効です。
法人化のデメリットと注意点
法人化には多くのメリットがありますが、事前にリスクや注意点を把握しておくことも重要です。
ここでは、法人化における3つの注意点を解説します。
法人化により手続きや運営の負担が増える
法人として事業を運営する場合、手続きや管理面での要件が増加し、運営業務が複雑化します。
個人事務所では簡単に実施できていた作業も、法人化後は法令遵守および届出が求められるため、事前の準備が不可欠です。
| 分野 | 主な内容 | 
|---|---|
| 設立手続き | 登記・定款作成・管轄機関への届出が必要 | 
| 税務対応 | 法人税申告や決算書の作成が必須になる | 
| 労務管理 | 社会保険加入や給与明細交付などが義務化される | 
個人事務所では、経営者本人の確定申告のみだった税務処理も、法人化後は決算処理・法人税申告が必要となります。
また、社会保険の加入手続きや職員の給与明細交付・年末調整など、日常的な管理業務も増加します。
運営負担は増加するものの、体制を整備することで業務の標準化が進み、組織としての信頼性と安定性の確保につながる点はメリットです。

法人化による負担増加は短期的にはデメリットとなる一方で、将来を見据えた組織運営への投資と捉えることが重要です。
社員税理士は無限責任を負う点に注意
株式会社の取締役と異なり、税理士法人の社員税理士は法人の債務に対して個人資産で責任を負う「無限連帯責任」の立場となります。
株式会社の取締役は有限責任であり、法人の経営陣という立場は同じでも、税理士法人の社員税理士にかかる責任の比重は大きく異なるものです。
| 項目 | 概要 | 
|---|---|
| 責任の範囲 | 社員税理士は法人の債務に対して無限連帯責任を負う | 
| 加入・脱退 | 新加入者も既存債務に責任を負い、脱退後も2年間は責任が残る | 
| リスク対応 | 契約管理・内部統制・保険加入でリスクを軽減できる | 
実務上は、契約書の適切な管理や内部統制の整備により、損害が生じるリスクを大幅に抑えることが可能です。
顧問契約の内容を明確化し、業務範囲や責任範囲を文書化することで、トラブル時における責任追及の防止につながります。
また、賠償責任保険の加入や職員教育の徹底によって、実質的な負担リスクは限定的です。

無限責任という制度上の特性を十分に理解したうえで、リスクを予防・管理する体制を構築することが、税理士法人運営の安定につながります。
経営の意思決定に時間がかかる
税理士法人は、社員1人が1議決権を持つことが原則です。
したがって、社員税理士2名のような偶数の体制だと、意見が分かれた際に結論が出ない懸念があります。
それを防ぐには、奇数の社員税理士体制にするか、定款によって議決権割合を変更するといった対策を行っておくとよいでしょう。
ただし、社員税理士による合議制となることで、経営判断に時間を要する場合があります。
個人事務所では、経営者が単独で迅速に判断・実行できるため、意思決定にスピード感がありました。
法人では複数の社員税理士によって運営されるため、重要な方針変更や投資判断に際しては、会議体の開催や承認手続きが必要になります。
また、定款の変更や法人の解散のような重要な決定は、社員全員の同意が必須です。
| 視点 | 内容 | 
|---|---|
| 意思決定 | 合議制のため時間を要することがある | 
| 業務フロー | 会議・承認・稟議などの内部手続きが必要になる | 
| メリット | 判断の透明性が高まり、ミスやリスクの抑制につながる | 
| 対応策 | 決裁ルールの明確化で、迅速さと組織性の両立が可能 | 
ただし、こうした点は単なるデメリットではなく、組織運営におけるリスクを抑え、健全性を高めるための基盤ともいえます。

迅速な対応が求められる場面に備え、あらかじめ決裁ルールや責任分担を明確にしておくことで、組織力とスピードの両立が図れます。
税理士法人の設立フローと費用の目安
税理士法人の設立には、税理士2名以上の合意から始まり、定款作成・登記・各種届出・社会保険の手続きまで、複数のステップが必要です。
税理士2名以上で法人設立に合意し、出資割合や経営者を決定します。
法人名・所在地・目的などを記載した定款を作成し、公証人役場で認証を受けます。
登記申請の前に社員となる税理士は出資する持分を払い込んでおくのが一般的です。なお、出資を証明する書面や資料などは登記時に提出する必要はありません。
必要書類を整備し、法務局へ登記を申請します。登記完了により法人格が付与されます。
所轄の税理士会および税務署へ、法人設立届出書などを提出します。
年金事務所で厚生年金と健康保険に加入し、職員がいる場合は雇用保険の手続きも行います。
一般的には数万円から十数万円程度の費用負担となり、個人事務所からの移行に際しても過度な負担とはなりません。
実際の費用目安は次のとおりです。
| 項目 | 内容 | 目安費用 | 
|---|---|---|
| 持分出資額 | 社員税理士が設立時に払い込む金額 | ケースバイケース | 
| 登録免許税(登記) | 法務局での法人登記に必要な費用 | 60,000円 | 
| 定款認証費用 | 電子定款なら印紙代不要、紙の場合は印紙代あり | 0円~50,000円 | 
| 登記事項証明書・印鑑証明書など | 登記後の証明書取得など | 2,000~5,000円 | 
| 法人印鑑作成費用 | 実印・銀行印・角印など | 10,000~20,000円 | 
| 税理士会への登録手数料 | 地域により差あり | 20,000~30,000円 | 
| 社会保険・年金の手続き(社労士委託時) | 委託した場合の費用 | 20,000~50,000円 | 
| その他雑費(郵送・印紙など) | 細かな実費など | 5,000~10,000円 | 
出資する持分額は、当面の資金繰り予定の中で不足する運転資金に該当する金額となるのが一般的です。
したがって、税理士法人それぞれの事業計画および資金繰り予定は異なるため、金額はケースバイケースとなります。
なお、株式会社と違って、出資額を登記申請時に記載する必要はありません。
また、税理士法人設立後も、以下のような対応が必要となります。
設立後の必要手続き

税理士法人の設立には一定の手続きと準備を要しますが、計画的に進めることでスムーズな進行が可能です。
税理士法人化を見据えた統合・M&Aという選択肢も
法人化には、社員税理士2名以上の在籍が要件とされています。
そのため、個人で要件を満たすことが難しい場合は、他事務所との統合やM&Aが現実的な選択肢です。
この方法により、法人化の要件を満たすと同時に、組織規模の拡大や業務基盤の強化にもつながります。
特に、事業承継や後継者不足を背景としてM&Aを検討している事務所との連携は、双方にとって有効な解決策となります。
顧問先、人材、ノウハウなどを相互に活用することで、円滑な組織運営が実現可能です。
統合・M&Aを検討する際のポイントは、次のとおりです。
| ポイント | 内容 | 
|---|---|
| 要件 | 税理士法人は社員税理士2名以上の在籍が必要 | 
| 目的 | 法人化の実現、経営基盤の強化 | 
| 主なメリット | 組織規模の拡大、人材・顧問先・ノウハウの共有 | 
| 関連課題 | 後継者不足・事業承継への対応策となる | 
| 注意点 | 買い手は税理士に限られる(一般法人は不可) | 

このように、統合・M&Aは、法人化を進めるうえで戦略的な手段の1つです。
中長期的な成長や安定的な経営体制の構築を目指すうえでも、有効な選択肢となります。
まとめ|税理士事務所と税理士法人の違いを整理
税理士法人は、法人格を有することにより、組織の継続性や信頼性が高まり、人材採用や経営の安定にもつながります。
ただし、設立には社員税理士2名以上が必要であり、責任や手続き上の負担が増加する点には注意が必要です。
個人事務所として柔軟に運営を継続する選択も含め、経営方針や将来のビジョンに応じて、自らにとって最適な形を選択することが重要です。
判断のポイント

将来の方向性に合わせて、統合・M&Aなども含めた選択肢を視野に入れながら、最適な形を冷静に判断しましょう。
