職員への承継は本当に「幸せ」か? それぞれの明るい未来のための選択。

譲渡事務所

つくる社会保険労務士法人

開業年1997年
顧問先数約100社
職員数10名
譲渡
譲受
譲受事務所

社会保険労務士法人
亀井労務管理事務所

開業年1968年
顧問先数約500社
職員数26名

所内には資格者がいて、業績は最高潮。井上先生がそれでも譲渡を選んだ背景には、自分と同じ重荷を職員に背負わせたくないという強い思いがあった。職員の未来と顧問先の継続を両立させた、遠隔地M&Aの舞台裏に迫る。

――M&Aを検討された背景について教えてください。


井上: 社会の変化がとても複雑になってくるなかで、今いる職員だけでは手が回らない部分が出てきていました。新しい人材を採用しようにも、この採用難の時代ですから非常に困難です。一方で、今の職員は定着してくれて、本当によく働いてもらっているのですが、「定着する」ということは、一緒に年齢も上がっていくという現実があります。弊所は全員女性の事務所です。子供が巣立っていくと、今度は親の介護の問題が出てくるなど、やはりフルタイムで働ける状況をずっと維持できないという懸念もありました。そこで、3年ほど前に役員とも相談しながら、事務所の将来について考え始めたのがきっかけです。また、経営者向け講座を運営している個人事業の方をさらに伸ばしたいという思いもありました。そんなふうにいろいろと悩んでいた時期、ちょうどM&A関連のDMがたくさん届き、その中でも士業専門である士業事務所M&A支援協会さんに興味を持ちました。早速セミナーに参加し、信頼できる方に事務所をお任せする事業譲渡という道を最終的に選びました。

――職員さまへの承継という選択肢もあったなかで、なぜM&Aを選択したのでしょうか。

井上: そうですね。所内には資格者が複数名おり、職員への承継を考えたこともありました。でも、現実的に考えてみるといろんな面でハードルが高いと感じました。小さな事務所ではありますが、やはり経営を引き継ぐのは重荷だと思うんです。彼女たちも年齢を重ねていくなかで、同時に経営を担うというのはそれなりに大変です。力量的に不足しているという意味ではなく、経営を担うことで生まれる精神的・肉体的な負担や生活とのバランスを考えたときに、私と同じ思いを背負わせるのは違うのかなと思いました。

――職員の皆さまの負担を考慮しての判断だったんですね。

井上: そうです。また、私自身も新しい仕事が入ることが純粋に喜べなくなっていました。「これ以上仕事が増えたら、誰にどう振り分けようか」と、負担ばかり気にしてしまう。もしひとりでも欠員が出たら、残った全員が余計に負担を感じてしまう。こういった状況が長く続くことは健全な状態とは言えない。早めに手を打たなければと考えていました。

――井上先生が長年経営されてきた事務所を手放すことに迷いはありませんでしたか。

井上: 顧問先様や職員、今後の事務所の発展を考えるとそれはなかったですね。M&Aを決断したとき、私たちがちょうど過去最高の売上を記録したタイミングでした。もし体調を崩してからとか、事務所が傾き始めてからではここまでよいお相手と巡り合えたかどうか……。こんなよいご縁がなかったら「もう5年やろうか」とも考え直していたかもしれません。トップ面談で初めてお会いしたとき、松下先生が私よりも優秀な経営者さんだということがすぐにわかりました。私がやるよりも、職員のためには松下先生にお任せした方が絶対によい未来が得られるとその場ですぐに確信できたんです。

――事務所の状態がよいタイミングだったからこそ、M&Aという決断ができたんですね。

井上: 士業のネットワークで勉強会や交流会などに参加すると、社労士だけでなく、税理士さんも弁護士さんも、皆さん同じように事業承継で悩んでおられます。事務所の将来を考えると、すぐにでも着手しないといけないとわかっているのに、日々の仕事に忙殺されて手が出せないという方がほとんどなんです。だからこそ、事務所の経営状態も人間関係も整っている「今」が私たちの決断のときだと感じました。本当にベストタイミングだったと思います。

――亀井労務側はどのような背景で譲受に至ったのでしょうか?

松下: 弊所の経営方針として「脱ローカル」という戦略があります。50年以上続く事務所なので、昔からの顧問先様が多いのですが、社会情勢の変化で廃業が増えており、拠点である名古屋市内だけで事務所を成長させていくことに限界を感じていました。採用についても同じで、名古屋市内だけで経験者を採用しようとしても限界があります。遠隔地にいきなり拠点を持ってゼロから開拓するのはむずかしいので、事務所成長のために相性のよい事務所とM&Aを行い、顧問先様・職員ごとグループに入ってもらいたいと考えていました。そのような中で、つくるさんと出会えたことは幸運でした。

――幹部会議では反対意見も多かったとうかがいました。

松下: はい、当初は全員反対でした。ちょうど自社の承継準備中のタイミングでもあり、リスクが高く失敗することもあるM&Aに、無理に今取り組む必要はないのではないかという声が多くありました。市内で職員を引き取らない形での事業譲渡はこれまでも何回かありましたが、別拠点で、かつ職員も一緒に引き継ぐ形は今回が初めてだったんです。

――どのように説得されたのでしょうか?

松下: 脱ローカルのための組織拡大、そのためのM&Aであると、必要性を繰り返し話しました。先ほどの名古屋拠点だけでは成長に限界があるという話と、遠隔地でもテレワークで業務が回る体制をつくっているからこそ、新拠点としてはむしろ合理的だと説得し、最終的に理解が得られました。

――お相手探しにあたって具体的な条件などは決めていましたか。

松下: M&Aを成功させるために必要な要件を洗い出していました。 具体的には2つです。まず、事務所に一定の規模があって、その組織だけで自走できる状態であること。次に、職員がテレワークを前提とした働き方に対応できる能力があることです。あとは、こういった形のM&Aは初めてだったので、距離的に日帰りで行ける場所だと嬉しいなという思いもありました。つくるさんなら車で2時間ちょっとの距離なので、すべての要件を満たしていました。

――トップ面談ではどのようなことをお話しされましたか?

井上: 事前にM&A協会さんと打ち合わせを入れていて、約束の時間の15分か20分くらい前に着いていたのですが、ふと席を立って会議室の外に出たら、松下先生たちも到着されていらっしゃったんです。仕事柄もあると思いますが、私は会議や打ち合わせの際は必ず15分前には現地に着いて万全の体制を整えるタイプだったので、まずその姿勢がとても好印象でした。実際にお話ししてみても波長がすごく合うと感じ、使っているシステムや、顧問先様に対する誠実な姿勢も似通っていたので、話している途中から「このご事務所にお任せしたい」と思っていました。

松下: 私からは所内の組織体制や具体的な働き方、勤怠、システムやインフラ関係など、運営に関わる部分をかなり細かく質問させていただきました。質問したいことは事前に準備していたのですが、すべて明確に回答をいただき、信頼できるお相手だと感じました。とても有意義な時間でした。

――条件面だけでなく、感覚的な部分での一致も大きかったのでしょうか。

松下: そうですね。数字だけでなく、企業文化が近いことは極めて重要な条件として挙げていました。うちは創業者が女性の社労士で、昔は女性スタッフが中心だったという歴史があります。そのため、女性特有のライフスタイルや働き方への理解という点では、文化的に親和性が高いだろうとはわかっていました。でも実際に統合してみて、ここまで摩擦なくスムーズにいくとは正直思っていませんでした。とても驚いています。

井上: 私が相手探しで何より大事にしていた軸は、顧問先様と職員が今まで以上に守られ、安心して働ける環境であることでした。だからこそ、事務所の空気感や、顧問先様に対する向き合い方が似ていることはとても重要でした。違う文化だからこそ刺激し合える部分もありますが、まずは同じ方向を向いて一緒に仕事ができそうかが重要だと思います。もしトップ面談のときに少しでも違和感を抱いていたら、きっとうまくいかなかったと思います。

――M&Aを行うにあたって懸念されていたことは何でしたか?

松下: やはり「文化の融合」が大変だという話はよく聞いていました。別々のカルチャーの組織が一つになるわけですから。特に井上先生の事務所は女性しかいらっしゃらなくて、うちは最近男性も増えているので、そこを気にされる方がいるのではないかという心配はありました。

井上: 私自身はまったく抵抗がなかったのですが、やはり職員が気にするポイントはあるかなと思っていました。仕事というよりは、日々の生活に付随する面ですね。休憩時間やランチなどのちょっとした時間、そういうときに気にならない距離感だとよいなとは思っていました。

松下: 実際、拍子抜けするくらいうまくいっています。顧問先様も職員も一定数は離脱があると思っていたんです。でも、今のところそういった話はなく、むしろ皆さんに新しいスタートを歓迎していただいています。よい意味で想定外でした。

井上: 統合するにあたって、自然とお互いに馴染んでいった感じですね。職員は特に、これまで男性という存在がなかったので不安だったとは思いますが、松下先生はすごく人柄がよく柔らかく接してくださるので、実際にお会いして安心できたんだと思います。

――引き継ぎをスムーズにするために工夫されたことは?

井上: 職員には社内セミナーや面談で丁寧に説明し、顧問先様には「担当も業務も変わらず、体制はより盤石になるので安心してください」と丁寧にお伝えしました。

松下: 業務フローや待遇は変えず、インフラ統合も1年後に設定しました。あえて「何も変えない」安心感が、スムーズな統合につながったんだと思います。

――お二人の今後の展望について教えてください。

井上: 週2回ほどの出社で、1年間は引き継ぎで事務所に残る予定です。そのあとは個人事業の方で、今までの社労士業務よりもさらに踏み込んだ経営者の伴走支援をしたいと思っています。

松下: 今回のM&Aの成功をモデルケースに、よいお相手がいれば積極的にM&Aを行い、まずは50名規模を目標に遠隔地に支店展開をしていきたいと考えています。

――最後に、M&Aを検討する方へメッセージをお願いします。

松下: 譲受側としては、目的を明確にしておくこと、事前に必要要件を洗い出しておくことが大切だと思います。大きな決断ですので、譲受は迷う場面がたくさんあります。判断に迷った際、よりどころとなる軸があれば決断ができますが、ブレてしまうと誤った選択をしかねません。今回も明確な基準があったからこそ迷わず決断することができました。

井上: 所長先生にとっては、自分がつくりあげてきた事務所は自分の人生そのものですよね。その功績を大切にしたいというお考えもあると思います。でもそれはいったん横に置いておいて、顧問先様と職員みんなのために「よりよい未来とは何か」という視点でじっくり考えていただいたら、自然とよい選択ができると思いますし、M&Aはとてもうまくいくのではないかと思います。

▼インタビューは動画はこちら

M&A成功のポイント

Point
  • 関わる人たちの将来から逆算して承継を考える
  • 数字や条件だけでなく、文化的な相性も重視
  • 統合は「変えない」方針で不安を最小化する

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