「家族にどう説明するか悩んだ」〜不安を抱え、周りと衝突しながら選んだM&A〜

「家族にどう説明するか悩んだ」〜不安を抱え、周りと衝突しながら選んだM&A〜
譲渡事務所

フェニックス社労士事務所

開業年数15年
顧問先件数17件
職員数0名
譲渡
譲受
譲受事務所

ワークシンク社会保険労務士法人

開業年数24年
顧問先件数70件
職員数12名

顧問先が増え続ける一方、1人での運営に限界を感じ、15年間続けていた事務所の今後を考えはじめたという峯岸氏。M&Aに対する周囲の反応や揺れ動く気持ちとどう向き合ったのか。譲受先のワークシンク社会保険労務士法人の渡邉氏との対談で話をうかがった。

――まずは、M&Aをお考えになったきっかけを教えてください。


峯岸: 歯科専門の社会保険労務士として、15年ほど事務所を運営していました。顧問先も増え続け順調に売上もあがっていましたが、ここ3年ほどは人で事務所を運営しており、体力的に限界を感じ始めていました。業務が膨大になり、だからと言って顧問先を置いて辞めるということもできず……。引き継ぎ先を見つける方法もわかりませんでした。そんなとき、士業事務所M&A支援協会さんからM&Aの案内が届きました。最初は自分には関係ない話だと思っていましたが、よく考えてみると顧問先を守れるのでは、と思うようになりました。

渡邉: M&Aと聞くと大企業の話だと思われがちですが、最近はそういうわけでもない。身近な話ですよね。私も以前から業界全体の動向として関心を持っていました。私は事務所を開業して23年が経ち、顧問先は70社ほどに増えていました。コロナ禍では助成金関連の業務が急増し、その対応に追われる日々が続いていましたが、助成金業務が落ち着くと「今後どのように事務所を成長させるべきか」を真剣に考えるようになりました。顧問先をもう少し開拓したいと漠然と思うなかで「M&Aもあるな」とひらめいて、いろいろ情報を収集するようになりました。士業事務所M&A支援協会の運営元であるアックスさんのセミナーなどには昔からよく参加していたのですが、コンサルタントの方からお話をうかがって、今回の案件をご紹介いただきました。弊所の経営のこともいつも親身になって考えてくださるので、普段から頼りにさせていただいています。

事務所を成長させるには専門性の高い人材が必要ということについて

――お互いの決め手は何だったのでしょうか?

峯岸: 本当に右も左もわからない状態からのスタートだったので、担当のコンサルタントの方にとにかくいろいろとご相談させていただいたのですが、単なる事務所の譲り渡しではなく、引き続き顧問先がサポートを受けられて、私も負担を減らして働き続けることが理想でした。その点、渡邉先生は誠実に考えてくださる方だと感じました。数字や条件も大切ですが、「この方にならお任せできる」と直感的に思えたことが大きな決め手になりました。

渡邉: もちろん、予算面の条件はありました。あとは現在の職員数で対応できる顧問先数であるかどうか。そのあたりは気にしてはいましたが、いちばんはM&Aによって事務所の成長につながる新たな分野を開拓できるかどうかです。まさに峯岸先生のような、特に歯科分野に強い専門家と連携することで、これまでアプローチできなかった顧問先を開拓できる可能性が広がると思い、ぜひ一緒にやっていきたいと思いました。これからの時代、事務所の安定した経営には専門性を持った人材の確保が不可欠です。峯岸先生もいろいろと悩まれたと思うのですが、統合に踏み切っていただいてよかったと本当に思います。

――数多くの仲介会社がありますが、弊社を選んでいただいた理由を教えてください。

峯岸: 士業特有の事情を理解してくれる点が大きかったです。ほかのM&A会社では対応がむずかしい部分も、士業事務所M&A支援協会さんは士業に特化しているので安心感がありました。自宅に案内が届いてからネットで検索をしてみたのですが、HPに事例なども掲載されていて、実際のM&Aのイメージがしやすかったです。
最初に電話をしたときに出られた担当の方もすごく感じがよかったのでここにお願いしようと決めました。

渡邉: 私も同じような理由です。一般企業向けのM&A仲介会社とは違い、士業事務所のM&Aの実績が豊富だったので、的確なアドバイスをいただけると感じました。特に、士業ならではのデリケートな顧問先対応についてのノウハウを持っていた点が大きかったです。担当の方が具体的な事例を基に説明してくださったので、非常に安心感を持って進めることができました。

――M&Aのプロセスで特に大変だったことは何でしょうか?

峯岸: 引退を決断するまでが大変でした。ここ3年くらい仕事で手一杯で、自分が築き上げてきた事務所を誰かに引き継ぐことに対して、感情的な部分でなかなか割り切れない面もありました。結果として完全引退を選びましたが、譲渡にもいろいろな形式があると知って、どんな形が自分に合っているのかも悩みました。また、家族にどう説明するかも悩みました。実際、家族に初めて打ち明けたときは「大丈夫なのか」とかなり配されました。父や姉はM&Aという言葉もよく知らず、ハゲタカや乗っ取りのようなイメージがあったようで、不安が大きかったようです。たまたまテレビでやっていたM&Aのニュースにもとても敏感になっていました。話せば喧嘩のようになったときもあったのですが、士業事務所M&A支援協会さんのHPを見てもらって、きちんと説明をしたら少しずつ納得してもらえました。
 
また、顧問先への引き継ぎは非常に慎重になりました。一人ひとりに直接説明を行い、安心していただくための努力を重ねました。引き継ぎの調整はたくさんの時間と労力がかかります。まだ引き継ぎ自体は途中なのですが、精神的に重荷だった部分が減っていくのを実感しています。

渡邉: 統合後の新体制での業務効率化や、顧問先へのスムーズな挨拶と引き継ぎが課題です。たとえば飲食店などは店舗をそのまま引き受けて、名前もそのままにして完了という引き継ぎもあるようですが、士業事務所はどうしても所長先生に依存する面があります。実際、「峯岸先生だから頼んでいる」というお客様が数多くいらっしゃいます。峯岸先生と長くお付き合いのある顧問先の方々にも新体制を受け入れてもらうため、今後も峯岸先生に同行していただく場面が必要だと感じています。その点については、当面の間は峯岸先生に勤務社労士として残っていただけるので心強いです。
 
新体制での業務効率化についてはまだまだ手探りなのですが、スタッフ間での役割分担の再構築が必要だと感じます。

――プライベートや仕事における今後のお二人のビジョンをぜひ教えてください

峯岸: まずは業務の引き継ぎを完了させること。渡邉先生のもとでも長く顧問契約が続くように精いっぱいがんばりたいと思っています。プライベートでは……趣味のエレクトーンに集中したいと思っています。こんな話でもいいんでしょうか?(笑)エレクトーンは3年ほどやっていて、実は作曲もしています。いつか自作曲を演奏することが夢なんです。仕事はきちんとやり抜いたうえで、音楽という新たな挑戦に力を注ぎたいと考えています。

渡邉: 私は歯科分野の顧問先を新たな事務所の強みに育てたいと考えています。また、業務効率化のためにもITツールの導入を積極的に進めたいです。RPAを活用した業務自動化をさらに強化し、より効率的で質の高いサービスを、安定的かつ継続的に、そして柔軟に提供していきたいと考えています。これを機に、スタッフ全体のスキルアップも目指し、事務所全体の業務レベルを引き上げていければ理想的ですね。

早めの決断がすべての負担を軽減させる事について

――最後に、M&Aを検討している、悩まれている先生方へメッセージをお願いします。

峯岸: やはり決断するなら早い方がよいと思います。そう簡単には決められないことだと思いますが、事務所が衰退してきてからでは手遅れになってしまい、廃業せざるを得ないということもあります。専門家などに話を聞いて、なるべくよい状態で決断できると理想的だと思います。M&Aにはいろいろな形があります。引き継ぎ後に完全に引退せず、働いていくこともできます。ぜひ、自分に合った形を選んでください。

渡邉: M&Aは、事務所の成長や安定を考えるうえでとても有効な手段です。これはM&Aに限らずですが、とにかく行動しないことには何も始まりません。私もM&Aを考え始めてから実行に至るまでは1年ほどかかったと思います。1カ月、2カ月で決断できることではありませんが、地道に情報収集を続けて、事務所としてよいご縁があったタイミングで決断できる状態にしておくということも大切だと思います。

峯岸: 私も、もっと早くこの選択肢を知っていれば、さらに余裕をもって進められたと思いました。M&Aを考えている方には、まずは情報収集から始めることをおすすめします。
情報が不足していると、決断のタイミングを見誤る可能性がありますし、しっかり準備しておけば、よりスムーズに進められると実感しました。

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M&A成功のポイント

Point
  • 早めのM&Aでサービスの維持に成功
  • 人柄を重視したM&Aでスムーズな引き継ぎを実現
  • セカンドキャリアも目指せるM&Aの形を選択

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