40代で決断!経営者として理想のキャリアを実現するための事業承継

桜花税理士法人
株式会社マイアカ
今井 美甫先生
| 開業年 | 2022年 |
|---|---|
| 顧問先数 | 約50件 |
| 職員数 | 6名 |

ケイエム会計グループ
市川 竜也氏
| 開業年 | 1937年 |
|---|---|
| 顧問先数 | 約400件 |
| 職員数 | 23名 |
税理士法人やコンサルティング会社を率い、社外取締役や講師としても活躍する公認会計士・税理士の今井美甫氏。幅広い仕事に挑む一方、譲渡前には心身ともに追い詰められていたという。40代での譲渡の決断のウラ側を、譲受側のケイエム会計との対談で聞いた。
「かっこいい!」大絶賛された前向きな承継
――今井先生は40代という若さでM&Aを決断されましたが、なぜこのタイミングでの決断だったのでしょうか。
今井: 桜花税理士法人の経営のほか、公認会計士業務を主に取り扱
う株式会社マイアカの経営や、他社の役員業などを兼任していくなかで、ありがたいことにお客様は増え続けていました。ただ、バックオフィス業務まで1人で抱え込んでしまっていたので、完全にキャパオーバーになっていて……。このままではよくないと思い、体制を強化する方法を模索した結果、M&Aにたどり着きました。ゆくゆくはマイアカの事業の方に注力したいという理想もあり、桜花税理士法人をケイエム会計さんに譲渡し、1年程度は引き継ぎ業務に関わっていく予定です。
――お客様の反応はどのようなものでしたか。
今井: 実は、「ネガティブに受け止められたらどうしよう」と少し身構えていました。でも、いざ顧問先の皆さまにお伝えしてみると、拍子抜けするくらい快くご理解いただけました。「そうなんですね」という感じで、不満や反発の声は一切なかったどころか、仲良くさせていただいている個人のお客様からは、「その若さでバイアウトするなんてすごくかっこいい!」と賞賛していただけたんです。同業の会計士からも「短い期間で事務所の価値を築いてバイアウトできたのは、立派な経営実績だよね」と言っていただけて、本当にうれしかったです。経営における前向きな選択肢を、実績としてフラットに評価してもらえた気がします。
――引き継ぎを開始された今、お気持ちに変化はありましたか。
今井: 気持ちがとても楽になりました。1円も間違えられない給与計算業務などは本当にプレッシャーだったので、そうした期日に追われるタスクから解放されただけで、まだ引き継ぎの途中ではありますが、業務量が半分になったかのような解放感があります。だから、譲受側の市川さんには本当に感謝しかありません。市川さんは知識も経験も豊富で、私のキャリアのことも真剣に考えながら業務を引き継いでくれました。本当にこの決断をしてよかったと思っています。
壊れる寸前に職員から打ち明けられた不満

――M&Aをご検討される前、ご事務所はどのような状況だったのでしょうか。
今井: いわゆる町の税理士事務所を法人化したような形で、お客様は個人・法人を合わせて50件ほど、職員は5名ほどでした。業績は好調でしたが、私は本当にギリギリの状態で働いていました。そんな状況のなかであるとき、創業期から長く働いてくれている職員に「先生が忙しすぎて何も相談ができない」「確定申告が近いのに大丈夫なのか」と不安や不満を直接伝えられたことがありました。AIを活用して業務をなるべくコンパクトにしたり、チャットボットで職員とコミュニケーションを取れるようにしたり、自分なりに業務過多の対応策を講じていたつもりだったので、「私の働き方が職員を不安にさせてしまっている」という事実を痛感しました。それが具体的にM&Aを考えるきっかけになった出来事です。過去に後継者の採用を考えたこともありましたが、業務内容的にどうしても会計士を探す必要がありました。しかし、町田近辺で経営を担える会計士を採用するのは非常に困難です。所内にはすでに資格者もいましたが、経営を任せるとなると話は違いました。
――そこから、実際に動き始められたのですね。
今井: はい。仲介会社を通さずに事務所を譲渡することも考えましたが、やはりリスクが大きい。ほかの手段はないかとAIなども使って調べていくなかで、士業専門の仲介会社としてアックスさんが運営されている士業事務所M&A支援協会の存在を知り、ご相談しました。最初は、「本当に買い手がつくのだろうか」と心配していました。町田周辺にはベテランの先生が多く、うちは小規模で業歴も浅く私自身もまだまだ若手なため、柔軟に対応 してくれるお相手はなかなかいないだろうなと。でも、ご相談してからは、不思議なほどサクサクと話が進んでいって、不安を感じる余裕もないまま無事に成約に至りました。アックスさんを信じて、思い切って一歩を踏み出して良かったです。M&Aの仲介会社と聞くと、押しの強い担当者が出てくるのではないかという不安もありましたが、アックスさんには最初から本当に真摯に対応していただけて安心しました。
――職員の皆さまの反応はいかがでしたか。
今井: ハレーションは全然ありませんでした。というのも、私は普段から、コンサルティング業務や大学での講師業など、やりたい活動の信念を職員に伝えていました。だから「今井はそっちの仕事がやりたいんだろうな」と最初から理解されていたのだと思います。むしろ、死にそうになりながら忙しくしている姿を見られていたので、M&Aと聞いて、驚くどころか安心したのではないでしょうか。
「もう来なくていい」と言われるまで通い続ける
――今回、譲受に手を挙げられたきっかけは何だったのでしょうか。
市川: 弊社は浜松に本部がありますが、地方は年々人口減少が進んでおり、都市部にも収益源を作っていきたいと考えていました。以前より支店として吉祥寺に事務所は構えていたものの、まだまだリソースが不足していたんです。そんなときにアックスさんからお話をいただきました。今井さんのような40代の女性公認会計士による案件は極めて珍しく、町田という地域性や今井さんのお人柄を含めて、素晴らしい相乗効果が生まれると直感しました。
――ご成約後、市川さんはかなりの頻度で町田に通われているそうですね。
市川: 週に3〜4日は町田の事務所に滞在しています。M&Aは引き継ぎにおいても人間関係がすべてなので、訪問によるコミュニケーションを最重視しています。チャットは便利ですが言葉の相違も生まれやすい。譲渡側の職員の皆さまに、いい意味で「もう来なくても大丈夫ですよ!」と心の底から思われるまで、とにかく顔を出し続けようと決めています。
――具体的にはどのようなコミュニケーションを大切にされているのですか。
市川: 業務の引き継ぎはもちろんですが、他愛のない雑談も大切だと思っています。職員の皆さまとコミュニケーションを取って趣味の話をしたり、そこから町田という土地のこともしっかり勉強させてもらっています。
今井: 市川さんのその姿勢は本当に尊敬しています。実際に現地に足を運んで地域の文化を理解しようと努めてくださるからこそ、弊社の職員も、顧問先の皆さまも安心していると思います。おかげで引き継ぎもスムーズに進められています。このあたりの中小企業の社長は「町田ゼルビア」というサッカークラブのファンが多いんですが、そういった地元の文化まで調べていらっしゃって驚きました。
市川: 今井さんの事務所の職員様は本当に人柄が良くて、こちらこそ非常にありがたく感じています。引き継ぎは玉手箱を開けるような出たとこ勝負になるのが現実です。契約前に職員様とお会いしたり話 したりすることは当然できないため、こればかりはフタを開けてみないと分からないことです。最低限、事前に集められる情報は集めますが、譲渡側の先生も職員の性格まで書類に詳しく書くことは難しいでしょうし。どんなことでも引き受けて、前向きに対応する覚悟と体制を持っていなければ、そもそも事務所を譲り受けることはできないとも思っています。しかし、今回はその覚悟も不要に終わり、今井さんをはじめとした素晴らしい職員の皆さまと出会えたのは、すごく運の良いことだったなと感じています。
――トップ面談での信頼構築や見極めはどのようにされているのでしょうか。
市川: やはり所長のお人柄がうちと合いそうかというところですね。同時に、我々も選んでいただく立場なので、いかに私たちのありのままを開示して安心していただけるかを徹底しました。特に弊社は地方という特徴もあるので、少しでも私たちの本気が伝わればと思い、トップ面談時の資料はかなり細かく作り込んでお渡ししました。
プラン次第で仕事も人生もさらに面白くなる

――今後のご自身のキャリアについては、どのように考えていらっしゃいますか。
今井: 今回の譲渡は、自分自身のキャリアを見直す大きなきっかけにもなりました。今後は、私の持っている知識を自分だけのものにせず、これまで培ってきた暗黙知を、きちんと文章や知識として形にし、次の世代へ引き継いでいきたいと思っています。たとえば、啓蒙活動や研究、あるいは教授としてもっと教壇に立つ道へも進んでいけたらというキャリアイメージを持っています。現在は株式会社マイアカの方で、公認会計士を目指す受験生をインターンに近い形で雇っているのですが、私の会社から公認会計士を輩出すること、そして公認会計士になりたいと思う人を増やす活動をこれからも続けていきたいです。私、公認会計士という仕事が本当に大好きなんです。
――市川さんから見て、今井先生のこうしたビジョンはどのように映っていますか。
市川: 素晴らしいですよね。これだけの圧倒的な強みを持つ方は、今後のご本人のキャリアを考えても、なるべく自由に動いてもらうことが一番いい。私たちケイエム会計側がバックオフィスの土台を固めて守備を徹底し、今井さんのようなスターが自由にプレイできる環境を作っていく。それが結果として、1年間の引き継ぎを終えた後も、双方にとって最大のメリットにつながると考えています。今井さんの顧問先の皆さまも、その方がきっと安心していただけると思っています。
今井: 私は全くスターだなんて自負していないですが(笑)。ただ、私が自由に動ける環境を整えていただいた分、これからの1年間はソフトランディングでお客様を確実に引き継いでいくという、私自身の役割をしっかりと全うしたいと考えております。
市川: 今回のM&Aでは、今井さんは別事業を継続される前提でしたが、一般的にM&Aというと「売って終わり」「譲渡後は引退して隠居」という寂しいイメージを持たれがちですよね。でも、引退前提の先生であっても、譲渡をきっかけにその後のビジネスや人生が活発になることもあると思うんです。弊社が過去に経験したM&Aで、引退予定であった旧所長の先生に一時的に新規営業チームに参加していただいたことがあるのですが、そこでの業務の相性がよく、結果として継続して働いていただいているケースがあります。譲渡側の先生の意思と譲受側のプラン ニング次第ではありますが、ビジネスの話だけに限らず、お互いにとって最高のプランを模索していくことこそが、これからの理想的なM&Aの形だと思います。そのためには、譲渡側の所長や職員様にとってプラスになるような環境を提供できる体制を整えておくことが大事だと思います。
今井: もし後継者がおらず、1人で抱え込んで「どうしようかな」と悩まれている先生がいらっしゃるなら、悩んだその時点で、それはもうM&Aを進めるべきタイミングなのだと思います。怖がらず、まずは1歩進めてみる。それが、自分にとっても職員の皆さまや顧問先の皆さまにとっても、より良い未来を開くきっかけになるはずです。
担当コンサルタントMEMO

対等な関係性構築がポイント
両社ともに対等な立場で、常にお相手への理解やリスペクトを持たれていたことが印象的でした。承継の目的を明確にし、お互いにとっていい結果になるよう条件を検討されていたので、非常にスムーズにM&Aが進んでいきました。もちろん、より有利になる条件を考えることも大切ですが、両社のビジョン実現のために、まずお互いを理解し尊重しあうことが何よりも大切だということが体現された案件でした。(担当/前田啓道)
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