成約実績

M&A成約事例の紹介

士業事務所M&A支援協会にて成約いただいた6つの事例を、対談形式でご紹介いたします。
※プライバシー保護のため、情報を一部加工し掲載しています。また、事務所情報はインタビュー時のものを掲載しています。

インタビュー一覧

「100年続く事務所をつくりたい」

父が経営していた事務所を守り抜くために奔走
譲渡事務所A

A先生

開業年数58年
顧問先件数100件
職員数3名
譲渡
譲受
譲受事務所B
開業年数4年
顧問先件数200名
職員数12名

――まずは、M&Aを考えた背景についてお聞かせください。


A先生: M&Aを考えたのは2024年の春頃からです。所長である父が89歳になり、体調を崩しはじめたことが大きなきっかけでした。私は税理士の資格を持っておらず、父が創業し58年間守ってきたこの会計事務所を、どうにかして守らねばという思いに駆られました。

顧問先のなかには、50年以上お付き合いのある方もいらっしゃる。従業員の生活もある。そう考えたとき、M&Aという選択肢が浮かびました。父は「生涯現役」を信条としていましたから、これまで事務所の承継について、私から話題に出すことはありませんでした。けれどいざ話を切り出すと、『それがいいね』『従業員と顧問先を頼む』と、気持ちのこもった言葉をもらいました。その一言が、私の背中を押してくれました。そこからネットで情報収集して、仲介会社にも何社か問い合わせ、今回のM&Aのほぼすべてを自分で決めていきました。父も顧問先のM&A案件を何度も経験しているので、M&Aに対する理解はあったのだと思います。

――お相手探しの際、どのような条件を重視されたのですか?

A先生: 大きく3つありました。1つ目が従業員の継続雇用。給料や雇用形態もそのままに引き継いでもらえる事務所を探していました。2つ目が、事務所の立地です。目黒オフィスは父の所有物でして、顧問先のお客様もこの事務所に来られる方が多いので、そのまま継続してほしいと伝えていました。3つ目が経理ソフトの継続利用です。この条件で複数の仲介会社に相談したところ、ある会社からは20件以上の事務所との面談をすすめられました。職員にもまだ打ち明けられないなか、通常業務をこなしながら次々と面談を行っていくのは本当に骨が折れました。そんなとき、士業事務所M&A支援協会さんから紹介されたのは4件だけ。さすがだなと思いました。そして、B事務所さんと出会うことができました。
 
B事務所さんは、創業3年目とは思えないほどエネルギッシュで、未来に対する意志がはっきりしていました。実際に交渉を進めていた候補先のなかには、「顧客は引き継げるが、事務所の運営形態は大きく変更させてほしい」という提案もありました。しかし、それでは長年築いてきた顧問先との信頼関係が崩れる可能性がある。その点についてB事務所さんは、これまでの事務所の在り方を尊重してくれたのはもちろん、「100年続く事務所を作りたい」というビジョンにも感銘を受けました。B事務所さんと一緒になることによって、今までとは違う業種のお客様との接点もできますし、業務の電子化や効率化などの部分で職員も新しい考えも学べる点もよいなと思いました。

――B事務所側の決め手は何だったのでしょうか?

B先生: B事務所側としても、当然ながらメリットがある統合でした。私は元々会計士ではあるのですが、M&AのFAS業務及びPEファンド(事業投資)業
務がキャリアのベースなので、M&Aには一定の見解があります。決め手は主に3点です。1つ目は、私たちが未開拓だった南東京の商圏に進出できること。2つ目は相続税申告案件という新たな専門分野を取り込めたこと。弊社はどちらかというと第三者承継やM&A案件を得意としているのですが、いわゆる相続案件はあまり扱ってこなかったんです。その点、A事務所さんは相続税の申告案件を毎年継続的に受注されていたので、そこも魅力的でした。そして3つ目が、職員の方々が自律的に動かれていたことです。統合後も職員さんに継続的に働いていただきたかったので、今回の引き継ぎでA事務所側の職員の方の働く環境はほぼ変えていません。自走されている組織だからこそ、業務のやり方や事務所の雰囲気はそのままに、今まで通りの働き方ができるように引き継ぎを進めました。とはいえ、「変えない」ことが目的ではありません。お互いに事務所をより良くしていきたいという思いはあるので、職員の方が今まで通りサービスの質を落とさずに働けるという前提のうえで、より良くできる部分があれば、お互いにキャッチアップしてやっていくことが目標ですね。

――M&Aを実行してよかったと感じる面はどんなところでしょうか?

B先生: 統合によって生まれる新しい出会いやコミュニケーションは純粋に楽しいです。お互いの事務所の考え方があるからこそ面白いのだと思います。私の個人的な感想にはなってしまうのですが、A先生の顧客対応スキルには本当に刺激を受けました。以前飲食店の経営をされていたこともあるそうで、サービス業の勘所をしっかり押さえた対応をされている。私も勉強になりますし、もっと頑張らないといけないなと思うようになりました。私は税理士ビジネスをサービス業としてやっていきたいという思いがあるのですが、税理士事務所で働いているだけだとなかなかサービス対応そのものを学ぶ機会はないので、A先生の存在は事務所全体にもとてもよい影響を与えていると思います。今は目標として、10年以内に100名規模の売上がある事務所にすることを目指しています。

A先生: 私はやはりM&Aのおかげで父の事務所を無事に存続させることができ、やっと心から安心できたということがいちばんです。あとはもう、職員3名と一緒に毎日元気に仕事を続けられるよう、これからも健康に気を付けて頑張っていきたいです。

――最後に、M&Aを検討している、悩まれている先生方へメッセージをお願いします。

B先生: M&Aを考えるなら「早めの相談」がカギだと思います。準備期間が長ければ長いほど、よりよい選択肢を確保できます。今のご事務所の価値を維持しながら、次の世代へスムーズに引き継ぐためにも、大切な職員や顧問先、そして長年築いてきた信頼関係や実績、所長としての思いを守るためにも、できるだけ早い段階から検討した方がよいと思います。

A先生: 知り合いの経営者から「担当の税理士さんが高齢で、最近レスポンスも遅くて心配だ」という話を聞くことが増えました。実際、顧問先を変えたいという相談も受けることがあります。特に、地方のエリアでは深刻な問題だと思います。そういう話を聞くと、やはり長年信頼をいただいているお客様だからこそ、心配や迷惑をかける前に事務所の未来を考えるべきだと感じています。M&Aとは少し逸れてしまうかもしれませんが、一つひとつは小さい事務所でも、集まって統合をすると大きな力になると思いますので、そういう考えも未来の選択肢としては面白いのではないかと思います。

略歴

2024年6月
調印式
2024年8月
A事務所が、B事務所に正式統合

「家族にどう説明するか悩んだ」

不安を抱え、周りと衝突しながら選んだM&A
譲渡事務所C

C先生 / 55歳

開業年数15年
顧問先件数17件
職員数0名
譲渡
譲受
譲受事務所D
開業年数24年
顧問先件数70件
職員数12名

――まずは、M&Aをお考えになったきっかけを教えてください。


C先生: 歯科専門の社会保険労務士として、15年ほど事務所を運営していました。顧問先も増え続け順調に売上もあがっていましたが、ここ3年ほどは人で事務所を運営しており、体力的に限界を感じ始めていました。業務が膨大になり、だからと言って顧問先を置いて辞めるということもできず……。引き継ぎ先を見つける方法もわかりませんでした。そんなとき、士業事務所M&A支援協会さんからM&Aの案内が届きました。最初は自分には関係ない話だと思っていましたが、よく考えてみると顧問先を守れるのでは、と思うようになりました。

D先生: M&Aと聞くと大企業の話だと思われがちですが、最近はそういうわけでもない。身近な話ですよね。私も以前から業界全体の動向として関心を持っていました。私は事務所を開業して23年が経ち、顧問先は70社ほどに増えていました。コロナ禍では助成金関連の業務が急増し、その対応に追われる日々が続いていましたが、助成金業務が落ち着くと「今後どのように事務所を成長させるべきか」を真剣に考えるようになりました。顧問先をもう少し開拓したいと漠然と思うなかで「M&Aもあるな」とひらめいて、いろいろ情報を収集するようになりました。士業事務所M&A支援協会の運営元であるアックスさんのセミナーなどには昔からよく参加していたのですが、コンサルタントの方からお話をうかがって、今回の案件をご紹介いただきました。弊所の経営のこともいつも親身になって考えてくださるので、普段から頼りにさせていただいています。

――お相手探しの際、どのような条件を重視されたのですか?

――お互いの決め手は何だったのでしょうか?

C先生: 本当に右も左もわからない状態からのスタートだったので、担当のコンサルタントの方にとにかくいろいろとご相談させていただいたのですが、単なる事務所の譲り渡しではなく、引き続き顧問先がサポートを受けられて、私も負担を減らして働き続けることが理想でした。その点、D先生は誠実に考えてくださる方だと感じました。数字や条件も大切ですが、「この方にならお任せできる」と直感的に思えたことが大きな決め手になりました。

D先生: もちろん、予算面の条件はありました。あとは現在の職員数で対応できる顧問先数であるかどうか。そのあたりは気にしてはいましたが、いちばんはM&Aによって事務所の成長につながる新たな分野を開拓できるかどうかです。まさにC先生のような、特に歯科分野に強い専門家と連携することで、これまでアプローチできなかった顧問先を開拓できる可能性が広がると思い、ぜひ一緒にやっていきたいと思いました。これからの時代、事務所の安定した経営には専門性を持った人材の確保が不可欠です。C先生もいろいろと悩まれたと思うのですが、統合に踏み切っていただいてよかったと本当に思います。

――M&Aのプロセスで特に大変だったことは何でしょうか?

C先生: 引退を決断するまでが大変でした。ここ3年くらい仕事で手一杯で、自分が築き上げてきた事務所を誰かに引き継ぐことに対して、感情的な部分でなかなか割り切れない面もありました。結果として完全引退を選びましたが、譲渡にもいろいろな形式があると知って、どんな形が自分に合っているのかも悩みました。また、家族にどう説明するかも悩みました。実際、家族に初めて打ち明けたときは「大丈夫なのか」とかなり配されました。父や姉はM&Aという言葉もよく知らず、ハゲタカや乗っ取りのようなイメージがあったようで、不安が大きかったようです。たまたまテレビでやっていたM&Aのニュースにもとても敏感になっていました。話せば喧嘩のようになったときもあったのですが、士業事務所M&A支援協会さんのHPを見てもらって、きちんと説明をしたら少しずつ納得してもらえました。
 
また、顧問先への引き継ぎは非常に慎重になりました。一人ひとりに直接説明を行い、安心していただくための努力を重ねました。引き継ぎの調整はたくさんの時間と労力がかかります。まだ引き継ぎ自体は途中なのですが、精神的に重荷だった部分が減っていくのを実感しています。

D先生: 統合後の新体制での業務効率化や、顧問先へのスムーズな挨拶と引き継ぎが課題です。たとえば飲食店などは店舗をそのまま引き受けて、名前もそのままにして完了という引き継ぎもあるようですが、士業事務所はどうしても所長先生に依存する面があります。実際、「C先生だから頼んでいる」というお客様が数多くいらっしゃいます。C先生と長くお付き合いのある顧問先の方々にも新体制を受け入れてもらうため、今後もC先生に同行していただく場面が必要だと感じています。その点については、当面の間はC先生に勤務社労士として残っていただけるので心強いです。
 
新体制での業務効率化についてはまだまだ手探りなのですが、スタッフ間での役割分担の再構築が必要だと感じます。

――最後に、M&Aを検討している、悩まれている先生方へメッセージをお願いします。

C先生: やはり決断するなら早い方がよいと思います。そう簡単には決められないことだと思いますが、事務所が衰退してきてからでは手遅れになってしまい、廃業せざるを得ないということもあります。専門家などに話を聞いて、なるべくよい状態で決断できると理想的だと思います。M&Aにはいろいろな形があります。引き継ぎ後に完全に引退せず、働いていくこともできます。ぜひ、自分に合った形を選んでください。

D先生: M&Aは、事務所の成長や安定を考えるうえでとても有効な手段です。これはM&Aに限らずですが、とにかく行動しないことには何も始まりません。私もM&Aを考え始めてから実行に至るまでは1年ほどかかったと思います。1カ月、2カ月で決断できることではありませんが、地道に情報収集を続けて、事務所としてよいご縁があったタイミングで決断できる状態にしておくということも大切だと思います。

略歴

2024年11月
調印式
2025年1月
C事務所が、D事務所に正式統合

「朝7時まで働いていたことも…」

「やりたいこと」と組織運営の狭間で――
譲渡事務所E

E先生 / 59歳

開業年数14年
顧問先件数60件
職員数3名
譲渡
譲受
譲受事務所F
開業年数3年
職員数100名

※グループ全体

――まずは、M&Aをお考えになったきっかけを教えてください。


E先生: お客様がどんどん増えていくなかで、税理士業務を超えた、いわゆる付加価値業務に注力していきたいと考えていました。ただ、顧問先様が増えるごとに、組織をうまく機能・発展させることがむずかしくなり、本来やりたいことと組織のバランスが取れずにもがいていました。マニュアル化は大事と思いつつも所内の業務標準化ができず、職員同士で助け合いながら、その都度指示を出していくような形で事務所運営をしておりました。

そのようななかで、今後、お客様に密着したサービスを展開していくためには、税務やマネジメントの部分を切り離し、捻出した時間でコンサル業務に注力すべきだと判断しました。統合するのであれば、組織化が進んでいる事務所と一緒になった方が職員にとってもプラスになると考え、顧問先様を安心して任せられること、今いる職員たちをきちんと受け入れてもらえることを大枠の条件としてM&Aを検討し始めました。

――譲受側として、受け入れたい理想の事務所はありますか?

F先生: 税理士事務所の仕事の基本的な部分は、どこの事務所も大きく変わらないところがあります。特定の業種や業務に特化していたり、所内のDX化の進行具合に差があったりなどの違いはあっても、そこはある程度合わせていける。ただ、どうしても変えられないのは、ご一緒する〝先生〞です。先生のマインドや人格は変えることができません。その先生のもとに集まって働いている職員さんにも同じことが言えます。税理士事務所というのは、その延長線上にあるものだと考えているので、私がM&Aを決める理由の98%はお相手の先生ですね。

とはいえ、最初は直感なんです。その直感が、2回、3回とお会いしていくうちに確信に変わります。E先生の場合も、「この人なら一緒にやっていける」という直感が確信に変わっていきました。所長面談の当日も、仕事の話はほとんどしませんでしたね。ご家族やお子さんの話で盛り上がったことを覚えています。

――職員や顧問先の反応はいかがでしたか?

E先生: これまで職員から事務所体制の改善を求められたこともありましたが、なかなか理想の形に持って行けずに苦しんでいたので、「今度こそ働きやすい体制になるからね」と話しました。最初は自分たちの処遇など心配はあったと思いますが、F事務所さんに直接お越しいただいき、これからのことを丁寧に説明していきました。ひとつの事務所、ひとつの拠点より、支店展開している事務所になったことで、職員たちも安心を得られたのではないかと、今になって思います。職員への発表の次に、顧問先様にはメールと書面で通知しました。「サービスの内容も担当者も変わりません。今後もよりよいサービスを提供していきます」というようなことを案内したので、特にお客様から不安がられることはありませんでした。

――M&A後の引き継ぎで注意するべきポイントはありますか?

F先生: 引き継ぎを成功させるポイントは、「変えないこと」だと考えています。たとえば、就業時間やお給料、指示系統など職員さんに影響のある部分は何も変えていません。あと、最も変えてはいけないのが『会計ソフト』。これだけは変えちゃダメだし、仮に変えるとしても時間をかけて段階を踏むことが大切です。

――今後の課題とビジョンを教えてください。

E先生: わたしは蒲田支店長として残ります。ただ、今まで通りの役割と業務内容では、これまでボトルネックだった部分が解消されないので、F事務所さんと相談しながら進めていければと思います。

F先生: 今後のビジョンとしては、まずは事務所全体の年間の営業目標の達成です。広告や紹介営業に加えてM&Aも取り入れ、事務所を拡大していかないと成し得ない高い目標を掲げています。事務所の規模が大きくなれば、M&Aの対象となる事務所もまた大きくなっていくと思うので、結果としてよいルーティーンになると考えています。ただ、想定上はよいルーティーンになるとしても、内部の管理や「人の和」、そして信頼関係を大切にしないと組織は崩れてしまう。そこのバランスを見ながら、大きな目標に向かって一体感を高めている最中です。

――最後に、M&Aを検討している、悩まれている先生方へメッセージをお願いします。

F先生: おそらく、今後M&Aはどんどん増えていくと思います。なるべく事務所に体力がある早いうちに引き継いでいかないと、職員や顧問先様にも迷惑がかかってしまうので、経営者自身も含めて色んな意味で動けなくなる前に考えることが重要ではないでしょうか。少しでも早い方が選択肢も広がり、メリットがあると思います。

略歴

2024年9月
調印式
2024年11月
E事務所が、F事務所に正式統合

「ほかの所長には会いませんでした」

統合に間違いはないと確信できた日
譲渡事務所G

G先生 / 65歳

開業年数51年
顧問先件数400件
職員数10名
譲渡
譲受
譲受事務所H
開業年数8年
顧問先件数1,000件
職員数56名

――まずは、M&Aをお考えになったきっかけを教えてください。


G先生: もともと、60歳を目処に事業承継を考えていました。しかし当時は踏み切れず、最終的に65歳での承継となりました。事業承継の方法として、最初に考えたのは親族内承継でした。息子もいましたし、娘も近くにいたので、可能性としてはゼロではなかったのですが、息子は東京で自身のキャリアを積んでおり、娘も家庭を持ち、それぞれ自分の道を進むことを決めていたため、親族内承継の選択肢はなくなりました。そこから、事業所内の誰か、もしくは自分が社労士法人を作ってほかの社労士さんに継いでもらうか、県外の法人さんと一緒になるかなど、いくつかの選択肢を考えました。結論、さらに成長させてくれる次の世代の人にお願いしていくべきだろうと考え、M&Aを選択しました。65歳というのはあくまで自分のタイミングではあったのですが、家内を含めた職員にもかなり負担をかけていましたし、事務所のタイミング的にもそろそろ……という感じでした。


――G先生自身の理想の働き方はどんなものでしたか?

G先生: 顧問先にとっての「茶飲み友達」のような存在になりたいと思っていました。お客様との1時間くらいの雑談のなかで、息抜きしてもらいながら、商売のヒントやちょっとした悩みの解決につながるようなことをお話しする。
DX化などが進む世の中ですが、アナログのコミュニケーションも大切です。そういう時間を通して、経営者の皆さまの背中を押す存在でありたいというのが理想でした。H先生にはそういう働き方のスタンスも受け入れていただいて、本当に感謝しています。


――H事務所はもともと複数の事務所から成り立ったとお聞きしています。今回のM&Aまでにはどのような背景があったのでしょうか?


H先生: 1976年に関西エリアを中心としてできた、労働保険事務組合がH事務所の礎です。異なる事務所が集まったグループ組織のようなもので、最終的には4拠点にまで拡大したのですが、分散していた力を1つにしようということで、H事務所として2016年に法人化しました。ただ、H事務所を立ち上げようとしていた時期に当時の創業者が事故に遭ってしまったんです。今も存命ではあるのですが、経営には関われなくなってしまい、私を含む4名で立ち上げました。
そういう意味ではH事務所の成り立ちは事業統合に近いですね。バラバラになっている拠点をどう活かすか、どう大きくしていくかを常に考えていました。そういう経験がベースにあることもあり、士業事務所M&A支援協会さんからM&Aのお話をいただいたときも、ぜひ前向きに検討させてくださいとお返事をして、今の結果になりました。
最初にG先生の事務所のノンネームシートを拝見したときは、「これは素晴らしい事務所だな」と感じました。規模感もあり、地域に根差している信頼ある社労士事務所だったからです。


――G先生は、所長面談の前に𠮷村先生のセミナーに参加されていたんですよね?

G先生: そうなんです。士業事務所M&A支援協会さんからご紹介いただいて、実は所長面談の直前にセミナーに参加していました。

H先生: 後々知ったんですが、実はいらっしゃったんですよね(笑)

G先生: だからある意味では先にお話を聞けてありがたかったです。事務所経営に関する講演でしたが、とても理想的だと感じました。そのあとの所長面談は「しまった」と反省しました。ほぼ私が一方的に話してしまったので……。

H先生: でも、聞きたかったことをすべてお話しいただいたのでありがたかったです。事業統合というものを、良くも悪くも少しわかっていたつもりではあったのですが、本当に大切なものは何かを思い出すことができました。お金のことや今後の運営のことなど、細かいことを気にされる方が多いと思っていたのですが、G先生からは事業の成り立ちですとか、「思い」の部分を深く聞けたのでハッとしました。事業統合というのは細かい条件の前にこうあるべきだなと改めて思いました。

G先生: 所長面談の場は、私の事務所のことをきちんとお伝えする大切な機会だと考えていたので、結果として一方的にお話をしてしまったのかもしれません。あくまで選ばれる立場でもありますので、やっぱりうちの事務所をしっかりと評価して、心から納得したうえで選んでいただける事務所さんと一緒になりたい。そういう思いを持って臨んでいました。
また、お会いしたときの「勘」も大事でした。直観のようなものでしょうか。実際にお話ししてみて、「この方なら」と確信できましたし、とにかく相性が合っていると感じました。経営指針書などを読ませてもらうと、「私が職員に言いたかったことはこれだ」というくらい共感できました。価値観なども通ずる部分が非常に多かったです。その後、ほかの所長には会いませんでしたから。

――調印式での契約締結の瞬間はどのようなお気持ちでしたか?

H先生: 実は、私は調印式で涙してしまったんです。それは、G先生が契約書に署名するとき、最後までご自身のことではなく、職員のことを話されていたからでした。
「この統合は間違いない」と確信できました。M&Aは単なる事業の売却ではなく、職員の未来をつくるためのものなのだと、改めて実感した瞬間でした。「ただの茶飲み友達になりたい」なんて、所長面談時には軽くおっしゃっていましたが、調印式のときのお話はすべてが職員に対する気持ちであったので感銘を受けました。昨年10月の調印式から4カ月、まだまだ引き継ぎはこれからという時期ですが、あの日感じた気持ちは間違っていなかったと思います。

G先生: 調印式で形式上は一区切りではありましたが、M&A自体は契約書にサインをして終わりではないので、まさにここからだなと感じました。事務所が今後より成長・発展するためのM&Aですから、職員にも顧問先にも「よかった」と思ってもらいたいですし、相乗効果を生んでいきたいです。

――最後に、M&Aを検討している、悩まれている先生方へメッセージをお願いします。

G先生: 「5年後、10年後、このままだと職員はどうなる?顧問先はどうなる?」といった不安と思いから、この決断に至りました。もしも私になにかあったら、職員は路頭に迷ってしまう。所長お一人の個人事務所だと話は変わってくるかもしれませんが、それなりに職員や顧問先を抱えている事務所は、その人たちのことを第一に考えた方がよいと思います。そこから自分がどうしたいのか、という順番で考えるとよいと思います。

H先生: ケースバイケースだと思うので一括りにするのはむずかしい部分もあります。事務所の5年先、10年先のことなんて……と考えると、つい後回しにしてしまう方が多いとは思いますが、5年、10年先なんてもう待ったなしで、今すぐにでも行動しなければならないという強い危機感があります。まずは「早く動きだす」ということが何よりも大事だと思います。

略歴

2024年5月
調印式
2024年10月
E事務所が、F事務所に正式統合

「命を取るか、仕事を取るか」

3週間の入院中に感じた危機感
譲渡事務所I

I先生 / 66歳

開業年数26年
顧問先件数170件
職員数4名
譲渡
譲受
譲受事務所J
開業年数38年
顧問先件数1,500件
職員数90名

――まずは、M&Aをお考えになったきっかけを教えてください。


I先生: 2022年の5月、繁忙期の最中に体調を崩して3週間ほど入院しました。何日も高熱が続き、医師から「命を取るか、仕事を取るか」と問われ、本当に追い詰められました。入院中とはいえ業務を止めるわけにはいかず、顧問先や職員を混乱させてしまったと思います。「自分が不在だと現場が回らなくなる」と実感しました。「このままじゃいけない」、「自分が突然いなくなったらどうなるのか……」と、日に日に不安が募っていきました。


――退院後、すぐにM&Aを検討されたのですか?

I先生: 最初からM&Aを選んだわけではありませんでした。まず考えたのは、事務所を税理士法人にすることでした。でも、現実は思った以上に厳しい。世の中の流れとして、後継者になれる資格者を探すのも簡単ではないですし、時間だけが過ぎていき、焦りと不安がますます募っていきました。
それでも、なんとか道を探したくて、知り合いの税理士に声をかけ、「一緒に税理士法人になることはできないだろうか」と相談をしたこともありました。でもみんな、それぞれに自分の事務所があって、生活があって、信念がある。そう簡単にはいきません。税務署OBに事務所に入ってもらうことも考
えましたが、それだと後継者問題の解決にはなりません。また、M&Aの専門会社ではない方たちから「こちらに事業を任せてもらえないか」と連絡が来ることも懸念していましたが、もしも、士業のM&Aに精通していない人たちに事務所を渡してしまって、長年一緒にやってきた職員や、大切な顧問先がバラバラにされてしまったら……。それだけは絶対に避けたかった。うまくいかなかったケースも耳にしたことがありました。

そんなふうにいろいろと考えたうえで、ようやくM&Aという選択肢に行き着きました。


――J事務所側の決め手は何だったのでしょうか?


J先生: 「総合力」を強めたいというところでしょうか。もともと宮城にも顧問先を持っていて、土地に愛着がありました。そこに拠点展開できればもっとやれることが増える。あと、採用も有利になると考えました。たとえば採用面接で地方の学生と話すと、「最終的には地元に帰りたい」という人が
多くて。私にできることは何だろうと考えたんです。うちにも地方の拠点があれば、東京本社で何年か働いてもらって、Uターンしてもらうこともできるじゃないですか。そういう事務所としての総合力を強めたいと思ったんです。顧問先と職員の幸せを叶えるための決断ですね。
I先生とは、初めててお会いしたときに相性が合うと感じました。会ってすぐに空気感が合うかどうかはとても大切にしています。人と人の相性は、M&Aの成否を分ける要素のひとつだと思います。最初は不安もありましたが、実際に仙台の事務所にうかがい、職員の方々と初めてお会いしたとき、とても感じがよくて安心しました。

――今後のビジョンをぜひ教えてください。

I先生: J先生の事務所と一緒になったことで、経理や労務、採用や育成の仕組みなど含めてすべて見直しが進み、よい意味で自分自身もリセットできた感覚です。一緒に支えてくれていた妻の負担も減らすことができました。
妻にもよく言われるのですが、この年齢になると、「あと何年仕事ができるのか」を考えるようになるんですよね。「これから2人で何ができるのか?」って。土日まで無我夢中で働いて、ふと振り返って、そこに何が残っているのだろうかと考えたときに、楽しい思い出がないのはやっぱり寂しい。何かあってから、「遅かった……」と後悔したくないと思うようになりました。だから、M&Aをして、ゆっくり家族との時間をつくれるようになってよかったと思っています。私も当初は生涯現役で働くつもりでいましたが、今となってはこの選択が正しかったと思います。

――J先生のビジョンもぜひ教えてください。

J先生: M&Aそのものは、まだ完全に終わったわけではありません。いまはまさに、その真っただ中。引き継ぎの最中であり、ここからの一歩一歩が、とても重要な意味を持っています。I先生と丁寧に相談を重ねながら、どの選択肢がよいのかを、一つひとつ確かめていく。まずは、「これでよかった」と胸を張って言える形にすること。それが今の目標です。実は、次の所長もすでに決まっています。私の役割はこれから「会長」としての立場へ移ります。会長としてやるべきことは明確です。事務所の舵を取り、人材を迎え入れ、育てること。それが、これからの私の仕事です。後に残る職員たちが、安心して、長く、そして誇りを持って働ける環境を整えておきたい。それが今、私が心のなかでいちばん強く願っていることです。

――最後に、M&Aを検討している、悩まれている先生方へメッセージをお願いします。

I先生: 「何かあってから」では遅いです。私は体調を崩したからこそ決断できたとも言えますが、もっと元気なうちに準備しておけば、職員にも余計な心配や不安をかけずに済んだと思います。体調を崩してからでは、気力も判断力も落ちがちですし、事務所の価値や信頼にも影響を与えてしまうリスクがあります。M&Aは「未来を創るための決断」であり、事務所や職員、顧問先の将来を守る選択肢でもあります。不安はもちろんありましたが、今では本当に
やってよかったと心から思っています。迷っている先生がいらっしゃれば、私の体験談が少しでも参考になれば嬉しいです。

略歴

2024年11月
調印式
2025年1月
I事務所が、J事務所に正式統合

「同じ苦労を繰り返さないように」

忘れられないほど苦しんだ先代からの急な引き継ぎ
譲渡事務所L

L先生 / 65歳

開業年数74年
顧問先件数300件
職員数13名
譲渡
譲受
譲受事務所N
開業年数100年
顧問先件数19,061件
職員数2,297名

――まずは、M&Aをお考えになったきっかけを教えてください。


L先生: 年齢的にはもう少し続けられるのですが、事務所の将来を考えたとき、選択肢として一度M&Aの話を聞いてみようと思って、士業事務所M&A支援協会さんに問い合わせをしました。資格者であるMさんに事務所を任せることも検討したのですが、今の人員では実務と経営を掛け持ちしないといけなくなってしまう。それでは負担をかけすぎてしまうし、やっぱりM&Aがいいのではないかと思いました。


M先生: 事務所の経営自体は順調でしたが、次の所長が誰になるのかはっきりしていなかったので、いつか変化が来るかもしれないとは思っていました。
とはいえ実際にN事務所さんと統合するという話を聞いたときは驚きましたね。まさかそんな大きな事務所と一緒になるとは思っていなかったので……。
今は支社をまとめる立場ですが、マネジメントの立場になるとは思っていませんでした。所内でM&Aの発表がされた後、ある職員から「Mさんは残りますよね?残るのだったら安心です」と言われて、そのときから「自分が切り盛りしなくては」と意識が変わったように思います。統合前の面談などでL先生からも「今後は中心になってもらいたい」という話を伝えていただいたのですが、緊張していたのかあまり記憶がなくて……(笑)
でも、今思うと、ポジションをもらったからこそ成長できたのかなと感じます。

L先生: 私自身、2代目の所長なのですが、先代が急に病気で亡くなってしまい、やむを得ず所長を引き受けたという経験があります。今回、そういう苦労を繰り返さないように早めに動き始めたというところもあります。

N先生: N事務所としては、宇都宮エリアで商圏を広げていきたいという狙いがありました。もともと宇都宮駅前に相続専門の支店を置いていたのですが、さらに業務の幅を広げていきたくて。L先生の事務所は法人業務で利益を上げられていて、ノンネームシートの時点でも懸念点がなく、ぜひお願いしたいとお伝えしました。


――大手事務所とのM&Aで不安に感じたことはありましたか?


M先生: もちろんありました。売り上げ目標やノルマなどが課されて、職員が窮屈に感じるのではないか、自由度が減るのではないかと心配していました。端的に言うとブラックな環境になるのではないかと思い、かなり気にしてはいました。でも実際はとても柔軟な環境で、いい意味での緩さもありとても安心しました。


L先生: 最初は不安がありましたが、M&Aを進める際に、現状の待遇と根本的な仕事のやり方について大きな変更はないと聞いていたので、そこは安心していました。


N先生: まずは職員の皆さまが納得して前向きになっていただかないとM&Aを進めるわけにはいきませんので、最初の説明などは私たちも事務所にうかがって丁寧に説明させていただきました。

O先生: 実際、私たちとしても今回のM&Aは「緩やかな統合」というイメージで進めていました。M先生とも「なるべく変えなくていいように進めましょう」という話をして引き継ぎを進め、1年ほどで現場は安定したように感じました。M先生がしっかりされているので、実務はとてもスムーズに進みました。

――今回のM&AAが成功したポイントは何だったと思いますか?

L先生: 統合して事務所を残す形を希望していたので、所内に「キーマン」がいるかどうかが重要だと思います。M先生がいなかったら、ここまでスムーズに進まなかったと思います。実際、私の業務の引き継ぎ自体は思っていたほど大変なものではなく、あとの運営をどうするのかの方が大事です。

O先生: 私も同意見です。結局、両事務所の懸け橋になる人材が必要。でも、引き渡すことになるL事務所側の方が大変なはずなので、そこをしっかりやっていただける方がいるのは心強かったですね。

N先生: もし、坂田さんのようなキーマンになれる人材がいなくても、もちろん事業承継は可能です。その場合、Oさんのようなエリアマネージャーを支店長として派遣しますが、こちら側を向いてくれるメンバーがどれだけいるか、が大切です。なので、まずは仲間をつくることが重要だと思います。若くてもいいので、一緒にやっていきたいと思ってくれるメンバーがいればもちろんサポートして育成もしていきます

――最後に、今後のビジョンを教えてください。

N先生: 各事務所30人ほどの規模にはしていきたいです。仮に退職があった場合、やはりそのくらい人数がいないと後が大変かなと思いますので。特に地方で経営統合させていただいた事務所で小規模なところはそれぐらいまで増やしていきたいと思っています。

M先生: N先生と同じく、規模はどんどん拡大させていきたいです。法人業務の場合は1人辞めてしまうとその人の案件を引き継がないといけないわけですが、今は正直そこまでの余裕はない。あと、辻・本郷さんと統合してから銀行からの紹介や株価評価の案件が増えてきました。そういう新規案件もいつでも受け入れられる状態にしておきたい。いろんな適性を持っている職員がいるので、規模を拡大して職員の成長のチャンスももっと広げていきたいです。

略歴

2022年6月
調印式
2022年11月
L事務所が、N事務所に正式統合

士業特化35年の実績で

事業承継・M&Aをサポートいたします。

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